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2004年10月10日 - 2004年10月16日

2004/10/16

父の版画展

14日から、弘前市の田中屋画廊で、父一戸泰彦が版画展を開催している。

IMG_8333.JPG


父は芸術肌で、僕が小さいときから、絵画、版画、フルート、歌、写真、いろいろな芸術系の趣味を楽しんでいた。子供達、とりわけ自分にはまったく遺伝しなかった。だいたいその時々のブームがあったのだが、版画は毎年の年賀状で、かなり力の入った多色刷りの版画を作っていた。版画の多色刷りは、色ごとに何枚もの版木を用いるので、結構大変。しかし出来上がった作品は、いつも好評で、毎年年賀状をもらうのを楽しみにしているという声もあった(もちろんリップサービス込みだろうが)。

銀行員だったが、趣味の時間のほうが生き生きしていた。「昼は銀行家、夜は社会学者」といわれたのは社会学者のシュッツだったと思うが、父は「昼は銀行家、夜はミケランジェロ」、あるいは「平日は銀行家、週末は趣味人」だった。

55歳で銀行を退職し、地元弘前の建設会社に移った父は、生まれ育った町弘前の懐かしい風景を中心に、普段から版画の製作をはじめた。銀行時代の知り合いの紹介で、何度か銀行に展示をしてもらったりしていた。同じように懐かしさを共有できる人が、何枚か買ってくれたようだった。

今回は初めての正式な個展であり、そのために新しい作品も作ったようだ。主として昭和30年代を想定しつつも、岩木山、ねぷた、桜、弘前城、りんごなどのテーマは、弘前にゆかりのある人々にとって、なじみのあるものばかりである。

父は弘前の中心街にある時計店に生まれた。時計台のある時計店で、街のシンボルであった。今もときどきマスコミの取材などで取り上げられる。父は時計店を継ぐことはなく、銀行に勤めた。その間に弘前の街並みはどんどん変化し、かつての中心街は空洞化している。

人々の話す言葉は、今も津軽弁だが、昔に比べればかなりわかりやすくなった。何いってるのかわからない、早口で津軽弁を話すお年寄りも少なくなった。都会と同じチェーン店もどんどん増えている。

すすみゆく「都会化」「標準化」は、人々の閉鎖的な感覚を変えていくのであれば、決して悪いことではないと思う。しかし弘前には、桜やお城やねぷたや、何より独特の文化の香りがある。それは閉鎖的な社会の名残なのかもしれないが、かといって単なる「観光資源」としてとらえるのも一面的だと思う。古くからあるものを単に放棄するのではなく、資産になるものをどのように残していくかということを考えたほうがいい。もちろん「資産」になるものはなんなのか、それは誰にとっての資産なのか、という問題があるのだけれども。

父の版画が父の過去へのノスタルジーに終わることなく、人々にそういう視点を与えるものであったほしいと思う。

さて、これは「郷土愛の弊害」を生むだろうか。

2004/10/15

稚内北星、秋葉原移転の意義

東京のG大学の学生から、稚内北星の「秋葉原クロスフィールド」進出について、大学宛に質問が来た。
秋葉原の街づくり戦略について、ゼミで研究しているようだ。
誰も答えてないようなので、授業の準備をさぼって、答えておいた。
以下その回答。

稚内北星学園大学の教員をしております、一戸と申します。

以下の件、もしまだ本学からの回答がないようであれば、私のほうから回答させていただきます。この件については、学長の丸山不二夫がもっとも熟知しておりますが、なにぶん学長という立場上非常に多忙でありまして、ご質問への回答を書く余裕はおそらくないだろうと思います。とりあえず可能な範囲で私のほうからお答えしましょう。

> 私今ゼミで、秋葉原の街づくり戦略(ITビジネス等)について研究しています。
> 調べていく上で、稚内北星大学が秋葉原に進出することを知り、
> 詳しくお話を聞かせていただけないかと思いメールいたしました。

まず前提として、秋葉原の街づくり戦略そのものについて、本学が深くかかわっているわけではありません。したがいまして、ご期待に沿える回答になるかどうかはあまり確信がないです。あくまでこの計画に参加するものとしての考えです。


> 具体的な質問内容として、
> ・「秋葉原クロスフィールド」 計画への参加要請を受けた理由とはなにか。

秋葉原におけるIT産業の集積をすすめるにあたって、その一部として本学の取り組みがふさわしいと評価されたものと考えています。従来から稚内を拠点に地道につみあげてきた、Java,Unix,ネットワークを中核とする本学のIT教育が、今春開校した東京のサテライト校でも高い評価となって現れ、さらにそれが「秋葉原クロスフィールド」への参加要請につながったものと考えています。

本当の参加「要請」の理由は、要請する側に別途あるのかもしれませんが、要請された側の推測では、以上のようになります。

> ・秋葉原に進出することによるメリット、デメリットはなんだと思うか。

当方のサテライト校は現在、市ヶ谷にあります。本拠地を東京においていない本学が、東京でプレゼンスを高めるために「秋葉原クロスフィールド」のような知名度の高い取組に加わることは、非常に大きな意味を持つだろうと考えました。
つまり、東京の中で「IT産業集積地」となる場所に拠点を置くことにメリットがあると考えましたわけで、その意味では「秋葉原」というのが必須条件だったというわけではありません。

では秋葉原が今後「IT産業集積地」となるのかどうか、その点は期待を持ってはいますけれども、絶対的な確信があるというわけではありません。90年代終わりに渋谷に「ビットバレー」というある種のムーブメントがあったのをご存知かと思いますが、それと比較してどうかということになれば、立地条件で有利な面、不利な面、いろいろあるでしょう。

本学は、東京サテライト校を単なる連絡オフィスとしてではなく、主として社会人を対象とした教育活動を行う拠点として、設置しております。したがって通ってくる学生の利便性という意味では、市ヶ谷と秋葉原を比較して、今回の「進出」がメリットとなるのかデメリットとなるのかという問題はあります。単純に考えれば、東京の西側からのアクセスという点では、市ヶ谷に若干の分がありましょう。一方東京の東側、あるいは千葉やつくば方面からのアクセスは、秋葉原のほうがいいわけで、必ずしもこの点がデメリットになるとも考えていません。

街のイメージとしては、いまそんなに秋葉原がよいイメージをもたれていると私個人は思っていませんが、明らかにある種の「ブランド」ではあると思います。ただ六本木ヒルズが六本木のイメージを大きく変えたように、このプロジェクト
が「秋葉原」のイメージを変える可能性はあると思います。六本木ヒルズと同様の高い集客効果を持つわけではないでしょうが、またそれとは違う形で(電気街を進化させた形で)「IT産業集積地」に育てていければいいのではないでしょうか。

> ・「大学連携パーク」、「産官学連携パーク」とはどのようなものなのか、
>   具体的にはなにをするのか。

この点は参加する我々の側にも、必ずしも全体像が見えているわけではありません。全体として「何をするのか」は、全体のオーガナイザーに問うていただくよりほかないと思います。

ただ一点だけいえることは、本学の取組が、他大学や企業から正当に評価される素地にはなるだろうと思います。

これまで本学が取り組んできた教育研究活動については、古くからある大学のほとんどが実現できなかった新しいITを大学教育に積極的に取り入れるものとして、稚内という首都東京から遠く離れた場所にありながら、IT業界や他大学から高い評価を得てきました。この点は、本学が企業と協力して行ってきた、東京での各種セミナーの講師陣とその内容のレベル、さらに毎年夏に行っているサマースクールに参加する層(先端的IT技術教育を必要とする社会人やいわゆる有名大学の学生、院生)やそこで展開される教育のレベルついて、本学ウェブサイトで確認していただければ、おわかりいただけるものと考えています。

遠くにいても良きパートナーがいると思ってもらえるならば、訪ねてくる人はいたわけですが、隣にいたらもっと頻繁に訪ねてきてもらえるわけですし、深く知ってもらえるきっかけにもなります。したがって、さまざまな企業との連携や大学間連携の可能性には、実は大きな期待を抱いています。

おそらくは、単純なオフィス街ではなく、人と人、団体と団体をつなげる仕掛けが必要でしょうね。IT業界はまだまだ成熟しきってはいませんから、大企業中心の旧来型の企業間連携とは違って、人と人のつながりが大きな意味を持つはずです。私の知っている限りでも、非常にフットワークの軽い人たちが多いですから、会ってすぐに動き必要に応じてまたすぐに会えるという環境が整えば、大きなシナジー効果を生むと考えています。

> ・どのような生徒を狙っているのか。

3年次に編入する制度ですので、「生徒」=高校生は対象ではありません。

当初の想定では、通常の業務の中で新しいITの必要性を感じている、IT業界の社会人をターゲットとして考えました。この層に対する本学の訴求力については、すでにサマースクールや東京でのセミナーによって、ある程度の確信を持っていました。技術が急速に進歩する中にあっても、陳腐化した技術を用いたシステム開発や保守運用といった業務がすぐに消え去るわけではなく、実はそのタイムラグが、働く人たちへのしわよせとなって現れます。つまり、日常業務におわれる中で、気がついてみたら自分が働く中で培った技術は社会の中で陳腐化し、自らの労働市場における価値が低下してしまっていた、ということが起こるわけです。「使い捨て」ですね。これに対して、大学として真摯に向き合っていこうというのが、基本的な考え方でした。予想通り、「wakhokの教育を東京で受けられる」として、大きな反響がありました。

ITという、情報といい、多くの大学が学部を設置しています。しかし、実はこうした基本的な需要にこたえる技術教育は、大学ではすっぽり抜け落ちていることが多いです。これには、高校や受験界の文系・理系のような旧来型の仕切り方も影響していると思います。高校の情報教育もあまりうまくいっていませんので、相変わらず「雰囲気」だけでよく考えずに「情報系」学部に進む学生が多いのでしょう。したがって、現役学生の層、すなわち、短大、高専、専門学校、大学を卒業したての人たちについては、編入学の資格を満たすものの、「社会でどのような技術が必要とされているか」をご存じないので、あまり大きな反響はないだろうと考えていました。ところがそうではありませんでした。

○○さんの先輩の中にも、SEとしてIT業界に就職して、ほとんど一から技術を学んでいるという方がきっといらっしゃると思います。大学は「情報」や「IT」を掲げていてもほとんどなにもしていないところが多いですし、企業側もそれに
対応する形で、手厚い研修制度をおいて「入社後」の教育に力を入れてきました。つまり大学卒の「即戦力」というのは、ほとんど期待されていなかったわけです。ところが昨今は、中国やインドでの「オフショア開発」が流行してくるなど、「日本のIT開発でも、これを担う人材は必ずしも日本人でなくてよい」という時代が訪れつつあります。研修コストもその後の人件費も高い日本人の新卒が、IT業界でそんなに重宝される時代ではありません。

こういった背景もあるのでしょう。本学への3年次編入を希望する若い層は、増えてきています。本学としては、こうした背景を踏まえて、高い意識をもって学ぶ学生ならば、社会での経験が必ずしも十分ではなくとも、積極的に受け入れていこうと思っていますし、それがすなわち日本のIT産業の底上げになるものと考えています。


以上、基本的に私個人の考えを書いたつもりですが、本学全体の意思としてもそんなに外れてはいないと思います。さらにご質問がございましたら、どうぞご遠慮なく。良い研究成果が出ますことをお祈りいたします。

2004/10/13

堀江貴文『儲かる会社の...』

流行に乗って(?)、『堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方』をざっと一気読みした。90年代半ばにインターネットの可能性を感じ、98年に稚内への赴任が内定し、2000年から稚内に引っ込んだ自分にとっては、それと同時代を生きた彼がどうやって今の地位を築いたのか、興味があった。

そんなにすごいことが書いてあるわけではない。しかし学ぶことは多かった。会社経営と大学経営ではちょっと違う部分があるけれど、共通する部分はある。大学で採用されずに葬られた意見、自分が発言のタイミングを逃してしまった意見、稚内流の妥協、詰めの甘さ、この4年半に取りこぼしたものがいろいろあったと反省させられた。そこで妥協しない力、勝負どころを間違わないセンス、そういうものが大事なのだろう。

そういうことをしないために、大学の仕事に就いたような気がするのだが。

@IT FYI

先週金曜日から、@IT東京サテライトに関する記事の掲載が始まった。

詳細は差し控えるが、掲載の始まった8日の夕方から、東京サテライトの注目度はぐんとあがった。
8月からの努力が、ようやく一つ報われたような気がしている。
できあがった記事を読んでみて、あらためて自分たちの置かれているポジションがわかってきた。

「稚内」的なのどかな感覚から早く抜け出して、厳しい競争を勝ち抜けるよう東京サテライトをさらに進化させること。
その「進化」を稚内にも必要な修正を施しながらフィードバックして、学生を覚醒させること。
短くまとめるとそうなる。

「稚内」にある現状を、「稚内」感覚で評価し、「稚内」モードのソリューションを出す、というスタイルは、いますぐやめないと。

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